« 自然のアルバム「千曲川のツバメ」 | トップページ | 岐阜県美濃加茂市JR美濃太田駅前の電線ねぐら(10/4)62羽 »

2012.10.06

コシアカツバメの集団ねぐら(10/3-4)奈良県曽爾高原

曽爾高原は室生赤目青山国定公園第一種特別地域内にある38ヘクタールのススキ草原です。毎年野焼きによって群落が維持されているようです。ここには日本野鳥の会Strix vol.18 2000年の佐藤雅史さんのコシアカツバメの秋期のねぐらに報告されているように、コシアカツバメの集団ねぐらがあったとのことで、今回それを目当てに訪問してきました。幸運なことに、ほぼ論文に記載された通りの状況を観察することができました。

★ねぐら入り時の観察
【観察場所】奈良県曽爾村曽爾高原(そにこうげん)
【標高】720m
【日時】2012年10月3日(水)16:30~18:40
【天候】晴れ
【日没】17:32
【観察者】渡辺仁
【ねぐら入りした種】コシアカツバメ(ごく少数のツバメが混じる)
【ねぐら入りした個体数】 約7,000羽
【ねぐら入りした場所】お亀池の北東部急斜面下部
【ねぐら入りした環境】ススキ群落
【ねぐら入り時刻】17:58(日没の26分後)
【ねぐら入り時の明るさ】2ルクス
【観察内容】
16:30 亀山峠の北稜線上(標高850m付近)を20羽ほどのコシアカツバメが飛翔している。
     採餌中と思われる。
17:00 稜線上のコシアカツバメは視界の中から消え去っていなくなる。
17:30 再びコシアカツバメが亀山峠の北稜線上に集まり始める。
17:40 コシアカツバメの数が増え始め、稜線上から移動しお亀池の上空高く飛び回る。
17:45 さらに数が増え1000羽以上が飛翔する。
17:50 数はさらに増え、一部は高度を下げてススキ原の上低くを飛び始める。
17:52 ススキ原に一時的に止まり始める個体がではじめる。この時点で明るさ24ルクス。
17:55 ススキ原を固まった群れで低く飛びまわる。
17:58 ほぼねぐら入り終了。2ルクス。

 最初は亀山峠の稜線上に上がり観察した。上がった時点では、まだ稜線上にコシアカツバメが飛んでいたがいつのまにかいなくなってしまった。ここで、一度は集団ねぐらの観察はできないものとあきらめた。
 しかし、ほぼ日没の頃にまたコシアカツバメが集まり、亀山峠北側のピークの東側上空で群れはどんどん大きくなった。その時点ではねぐらの場所がどこになるのかわからなかったが、17時40分頃に亀山高原側のススキ原の上空に群れが移動。西の山脈をバックに夕空を飛ぶコシアカツバメがよく観察できた。その時点で千羽以上のかなりの規模になった。ツバメと違い、飛んでいる時の声は小さ静かでく、ビュルビュルという小さな声がする程度。
 この時点で、ねぐら場所はお亀池側と推定されたので、歩道を駆け下り観察地点を斜面中腹に下げた。コシアカツバメの群れは上空にいたが、いつのまにか高度を下げ、お亀池の北側のススキ原のあたりを固まって飛ぶようになった。ねぐら入りをほぼ真上から見下ろすのは初めての経験。黒い塊がススキ原の上を這うように右往左往していた。
 そして、17時58分頃、かなり暗くなってからススキ原にねぐら入りする。
 その後、お亀池のほとりの歩道まで下りて、ライトスコープを使ってコシアカツバメを探した。その結果、google mapに示すとおり、お亀池の斜面下部、歩道より5mほど高い場所を下端に、幅約80m×高さ15mほどの範囲にコシアカツバメがねぐら入りしていた。密度はあまり高くなく、一本のススキに多数が止まるような状況ではなく、密度は比較的低めに見えた。なお、ツバメと同様、ライトによる忌避反応はほとんどなかった。
 ねぐら場所は、ススキ原の中で斜度が急な場所に見えた。目測で40~50度はあったと思われる。斜面の下部を使っていた。微細な環境としては、ススキのあまり成長の良くない場所に見えた(穂が比較的少ない場所)。ススキの部位としては、高い位置の穂は使っておらず、植物体のもっと低い場所(傾いた茎が多い?)を使っているようだった。
 なお、撮影した写真を見ると、コシアカツバメの群れの中にツバメが少なくとも1羽は混じっていた。しかし現場では飛翔中の個体をみる限り全く識別できなかった。


より大きな地図で コシアカツバメ集団ねぐら を表示

Redrumped_swallow_sone01
上空を飛翔するコシアカツバメの群れ

Redrumped_swallow_sone02
かなりの個体数。実際はこの写真に写っていない範囲をさらに多くのコシアカツバメが飛んでいた。

Redrumped_swallow_sone03
ススキ原にねぐら入りしたコシアカツバメ。ススキの穂の部分は使っていない。あまり密度は高くない。

Redrumped_swallow_sone04
写真にはツバメもねぐら入りしているのが写っていた。

Redrumped_swallow_sone05
お亀池近くの急な斜面下部にねぐら入りした。

Reedbed_sone
お亀池はヨシ原である。通常であればヨシ原にねぐら入りしそうだが、おそらく貧栄養のためにヨシの成長がすこぶる悪い。高さはせいぜい1m程度しかなく葉も小さい。ねぐら環境としては適さないと思われる。

★ねぐら発ち時の観察
【日時】2012年10月4日(木)5:20~6:10
【天候】曇り
【日出】5:54
【ねぐら発ち時刻】5:32(日出の22分前)
【ねぐら発ち時の明るさ】4ルクス
【観察内容】

5:32 第1群がねぐらから飛翔 1500羽程度 4ルクス
5:35 第2群がねぐらから飛翔 1500羽程度
5:40 第3群がねぐらから飛翔 2000羽程度 この群れが最大 20ルクス
5:43 第4群がねぐらから飛翔 1000羽程度
5:46 第5群がねぐらから飛翔  400羽程度
5:51 第6群がねぐらから飛翔  100羽程度 120ルクス

ねぐら発ち前にはススキ原から小さな声が聞こえる。
ススキ原から湧き出すように群れが飛び出し、どの群れも北西方向に飛び去った。
何群にも分かれて飛び出すのは、ツバメの集団ねぐらと同じ。
しかし、ねぐら発ち後にすぐに散開してばらばらに飛び去ってしまうツバメと比較して、今回のコシアカツバメは群れが散開するのが遅く、かなり遠くまで散開せずに飛翔してるように見えた。

実は夕方のねぐら入り時はここまでねぐら入り個体数が多いとは思わなかった。2000羽程度と見積もっていた。しかし、朝は何群にも亘って飛び出すのを見ると実際には多かったのだと感じた。
ツバメもコシアカツバメもそうだが、何群にも分かれて飛び出し、しかも一度飛び立った群れは戻らずに速やかに去るので朝の方が個体数は数えやすい。

Redrumped_swallow_sone06
ススキ原から湧き出すように飛び出すコシアカツバメの群れ

★コシアカツバメの集団ねぐらについての疑問
これだけの個体数のコシアカツバメが周辺で繁殖しているとは考えにくいので、これは渡り途中に形成される集団ねぐらだと考えられる。外側尾羽が長い個体が多いように感じたので相当数の成鳥が入っていると思われる。この時期のツバメと比較するとほとんど成鳥がいないので対照的である。このように高原でのススキ原をねぐらに使うのはコシアカツバメにとっては普通なのだろうか。
とすると、この曽爾高原の集団ねぐらは、季節的にはいつ頃から形成されいつピークを迎え、いつ消失するのだろうか。個体数の季節変化を追えば、いろいろな事がわかるだろう。さすがに何度も通える場所ではないので、地元の人々の調査を期待したい。

また、ねぐら環境としては、急斜面というのは対捕食者として安全な場所を選んでいると考えられる。
しかし、長い急斜面で高い位置でなく、比較的低い場所を選んでいるのは何故だろうか。(低いと言っても、斜面底部より5mほど高いので最低限のマージンは確保していると思われるが。)山岳地の上なので、斜面上部だと風衝が強いからだろうか。

また、少なくとも11年前の記録と同じような状況が確認されたということは、ススキ原の環境として安定している限りにおいては、コシアカツバメに普通に選好される環境なのだろう。野焼きによる環境維持が奏功しているとも考えられる。

« 自然のアルバム「千曲川のツバメ」 | トップページ | 岐阜県美濃加茂市JR美濃太田駅前の電線ねぐら(10/4)62羽 »

ツバメの集団ねぐら情報(その他の地域)」カテゴリの記事

コメント

渡辺さま
兵庫県の片岡です。曽爾高原のコシアカツバメねぐら調査、お疲れさまでした。大変興味深く読ませていただきました。
コシアカツバメの成鳥のうち、2回目の繁殖をしたものは、10月末にコロニーからいなくなるまでコロニーの巣の中でねぐらをとっています。しかし、2回目の繁殖に参加しなかった成鳥(2回目の繁殖個体は半減するため)や巣立った幼鳥は、いつの間にかコロニーからいなくなります。これらコロニーからいなくなった個体が曽爾高原に見られるような集団ねぐらを形成しているのではないかと思いました。10月中旬に、日中電線にずらっと並ぶ個体は、渡り途中の個体で、夜間渡っているのでは?と思っています。出張のため今年は曽爾高原へ行けそうにありませんが、来年はぜひ見に行きたいと思います。

片岡様
コメントありがとうございます。コシアカは10月末までコロニーにいるのですか。随分遅いのですね。
今、コシアカツバメに関する文献を集めています。しかしコシアカの文献は少ないので苦労してます。
繁殖中は巣でねぐらをとるのが普通なのでしょうね。ヨーロッパの記録では、ツバメと同じようにヨシ原や水際のヤナギなどにねぐらをとる事があるようです。

そして集団ねぐらを見る限り、やはりコシアカも普通のツバメ同様、昼に移動していると思っています。言い切るほど自信はありませんが。私の想像では、見つかりにくくとも、電線などの比較的近くのどこかに集団ねぐらがあると想像しています。ツバメほど個体数が多くはないので集団ねぐらを見つけるのは難しいと思いますが。。。

渡辺様
 先日10月6日、曽爾高原に行ってきました。渡辺さんの昨年の観察とほぼ同じ場所に3000~4000羽のコシアカツバメのねぐら入りを観察しました。実際目の前であれだけの数のコシアカツバメを見たのは初めてで、とても感動しました。ねぐらの位置は、もう少し北側の斜面を少し上がったところが中心で、池周辺の散策路からは結構離れていました。幼鳥や、換羽が止まっていない成鳥も含まれていることから、集団ねぐらは7月頃から形成されるのではないかと思います。ねぐらのイメージがつかめたので、ここ数日、兵庫県の似たような環境で探していますが、まだ見つかっていません。それにしても曽爾高原の観光客の多さにはおどろきでした。

片岡様
情報ありがとうございます。今年もコシアカツバメが来ているのですね。
曽爾高原は気になっていましたが、奈良は遠く、今年の遠征は諦めていました。
あれほどの個体数のコシアカツバメは圧巻ですよね。
もっと早い時期、そして、いつ頃まで集団ねぐらが維持されるのか気になります。
ありがとうございました。

この記事へのコメントは終了しました。

« 自然のアルバム「千曲川のツバメ」 | トップページ | 岐阜県美濃加茂市JR美濃太田駅前の電線ねぐら(10/4)62羽 »

2019年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

tweet

  • 管理人のツイート
無料ブログはココログ