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2012.10.07

岐阜県美濃加茂市JR美濃太田駅前の電線ねぐら(10/4)62羽

岐阜県美濃加茂市JR美濃太田駅前の電線ねぐら(2012/10/4)

【場所】岐阜県美濃加茂市 JR美濃太田駅前西側の通り
【日時】2012年10月4日(木)16:30~18:30
【日没】17:33
【天候】晴れ
【観察者】渡辺仁
【ねぐら入りした個体数】62羽
【ねぐら入りした環境】電線
【ねぐら入りした時刻】17:52(10ルクス)日没後19分
【観察メモ】
17:30 上空を2羽が飛ぶ
17:32 上空を8羽が飛ぶ
17:33 上空を12羽が飛ぶ
17:34 17羽に増え、電線にまとわりつくように飛ぶ。
17:35 17羽が一度、西側のホテルルートイン側の細い通りの電線に止まる。
     鳥害防止対策済みの電線には基本的の止まらないが、対策済みの電線についている細い
     線に止まろうとしてバランスがとれないツバメもいる。
17:39 電線に止まっているものと別に19羽が上空を飛ぶ。
17:40 電線に止まっていたツバメも全て飛び、全部で約50羽が飛ぶ。
17:41 一部が電線に止まるが上空を50羽が飛ぶ。
17:47 約60羽が電線に止まろうとする。30ルクス
17:49 15羽が電線に止まるが、50羽は上空に飛び出す。
17:52 ほぼ全てのツバメが電線と電柱に止まってねぐら入り。10ルクス。
以降も微妙なポジション争いは続く。

時期的にはもう集団ねぐらが解消される時期であるため、かなり少ない。ピーク時に近い2009年8月15日の報告はこちらを参照。

電線はツバメの糞害対策のため、徹底的に電線に止まれないようにするための突起や細線
が設置されている。2年前は交差点周辺に対策が限られていたが、ツバメの分布範囲のほぼ全域の
広大な範囲に設置されている。

しかし鳥害対策電線の効果は今ひとつのようだ。
地元商店街の弥生町発展会が今年も毎週掃除をしていたらしい。今回の観察でも、ツバメは対策済みの電線には止まりにくそうにしていたが、結局は対策されていない電線にねぐら入りしたし、電柱の上でねぐらをとった個体もいた。糞の落下痕跡から見ても、対策済みであってもツバメのねぐらとなっている電線もあったようだ。
なお、この記事では4年前から集団ねぐらができたとなっているが間違いと思われる。2009年当時、集団ねぐらの中心となっていた交差点にあったコンビニエンスストア(現在は閉店)の主人へのヒアリングでは、6~7年前からという言質を得ており、2002-2003年につまり9-10年前にはすでにこの位置に集団ねぐらが形成されていたと考えられる。

2009年時点でも鳥害防止用の突起付き電線にはツバメがねぐら入りしたが、対策ナシの電線よりはツバメの個体数が少なかった。現状も様々なタイプの鳥害防止電線が設置されており、タイプ別に効果の大小はありそうだ。ピーク時に観察すればその効果を評価できるだろう。

しかし本来のツバメの集団ねぐらの環境はヨシ原である。かつて広島県廿日市市で電線に集団ねぐらが形成されたことがあるが、ヨシ原が近傍にできた後、そちらに移動したとのことである。街中で対策をしてもイタチごっこになる可能性が高いので、ヨシ原を形成してそちらに移動してもらうのが一番望ましいだろう。木曽川の河川敷や周辺ため池を活用することはできないだろうか。
ムクドリなどは街中の方を好んでいるのではと思う点もあるが、ツバメの場合は現時点では周辺にヨシ原等の環境がない場合に限って電線を使っていると思われる。

最近、日本国内での電線ねぐらの情報がいくつも集まってきた。ソースがしっかりしているものに限っても以下の情報がある。ネットに掲載された情報から、もしかすると電線ねぐらがあるかもしれない場所は他にもいくつかある。とはいえツバメの電線ねぐらが珍しい事に違いはない。ヨシ原の保全を進めたい。

静岡県伊東市
岐阜県美濃加茂市
大阪府岸和田市
兵庫県宝塚市
兵庫県神戸市
兵庫県香美町
広島県廿日市市(今は消失か)
長崎県対馬市


より大きな地図で 美濃太田駅前ツバメ集団ねぐら を表示

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ねぐら入りした通り。南側から北側を撮影。

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電線にねぐら入りしたツバメ


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電線にねぐら入りしたツバメ


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電柱にねぐら入りしたツバメ

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電柱にねぐら入りしたツバメ


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電線にねぐら入りしたツバメ1羽


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電線を6本の細い線でガードして鳥が止まれないようにしている。これは効果があるかもしれない。細い線は足でつかめないためバランスがとりにくい。

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電線を突起で取り囲んだ対策。上下で別の種類。この対策では2009年の時からツバメが止まってねぐらにしている例が観察された。しかし対策ナシの電線よりはツバメの利用頻度は下がったようだった。

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上部だけを細い線でガードして鳥が止まれないようにしている。細い線は足でつかめないためバランスがとりにくい。今回もはばたいてバランスをとり続けるツバメを観察した。しかし上部1本だけだと、電線との間隔が広すぎて結局電線に止まってしまうのが今回観察された。また、正確に防止線が上部でない(傾いている)場合も電線に止まってしまい防止効果が薄くなってしまう。うまく設置するのが難しいだろう。

またどんなに厳重に対策しても個別宅への引き込み線など対策漏れが出てしまうし、電柱を使う例もある。電線に防止するだけでは根本的な対策にはなりにくいように思う。また、効果があった場合でも周辺に移動してしまうだけでイタチごっこになる可能性もある。本当は、ツバメがねぐら環境としてより好むヨシ原が近くにある方が良いのだが。

2012.10.06

コシアカツバメの集団ねぐら(10/3-4)奈良県曽爾高原

曽爾高原は室生赤目青山国定公園第一種特別地域内にある38ヘクタールのススキ草原です。毎年野焼きによって群落が維持されているようです。ここには日本野鳥の会Strix vol.18 2000年の佐藤雅史さんのコシアカツバメの秋期のねぐらに報告されているように、コシアカツバメの集団ねぐらがあったとのことで、今回それを目当てに訪問してきました。幸運なことに、ほぼ論文に記載された通りの状況を観察することができました。

★ねぐら入り時の観察
【観察場所】奈良県曽爾村曽爾高原(そにこうげん)
【標高】720m
【日時】2012年10月3日(水)16:30~18:40
【天候】晴れ
【日没】17:32
【観察者】渡辺仁
【ねぐら入りした種】コシアカツバメ(ごく少数のツバメが混じる)
【ねぐら入りした個体数】 約7,000羽
【ねぐら入りした場所】お亀池の北東部急斜面下部
【ねぐら入りした環境】ススキ群落
【ねぐら入り時刻】17:58(日没の26分後)
【ねぐら入り時の明るさ】2ルクス
【観察内容】
16:30 亀山峠の北稜線上(標高850m付近)を20羽ほどのコシアカツバメが飛翔している。
     採餌中と思われる。
17:00 稜線上のコシアカツバメは視界の中から消え去っていなくなる。
17:30 再びコシアカツバメが亀山峠の北稜線上に集まり始める。
17:40 コシアカツバメの数が増え始め、稜線上から移動しお亀池の上空高く飛び回る。
17:45 さらに数が増え1000羽以上が飛翔する。
17:50 数はさらに増え、一部は高度を下げてススキ原の上低くを飛び始める。
17:52 ススキ原に一時的に止まり始める個体がではじめる。この時点で明るさ24ルクス。
17:55 ススキ原を固まった群れで低く飛びまわる。
17:58 ほぼねぐら入り終了。2ルクス。

 最初は亀山峠の稜線上に上がり観察した。上がった時点では、まだ稜線上にコシアカツバメが飛んでいたがいつのまにかいなくなってしまった。ここで、一度は集団ねぐらの観察はできないものとあきらめた。
 しかし、ほぼ日没の頃にまたコシアカツバメが集まり、亀山峠北側のピークの東側上空で群れはどんどん大きくなった。その時点ではねぐらの場所がどこになるのかわからなかったが、17時40分頃に亀山高原側のススキ原の上空に群れが移動。西の山脈をバックに夕空を飛ぶコシアカツバメがよく観察できた。その時点で千羽以上のかなりの規模になった。ツバメと違い、飛んでいる時の声は小さ静かでく、ビュルビュルという小さな声がする程度。
 この時点で、ねぐら場所はお亀池側と推定されたので、歩道を駆け下り観察地点を斜面中腹に下げた。コシアカツバメの群れは上空にいたが、いつのまにか高度を下げ、お亀池の北側のススキ原のあたりを固まって飛ぶようになった。ねぐら入りをほぼ真上から見下ろすのは初めての経験。黒い塊がススキ原の上を這うように右往左往していた。
 そして、17時58分頃、かなり暗くなってからススキ原にねぐら入りする。
 その後、お亀池のほとりの歩道まで下りて、ライトスコープを使ってコシアカツバメを探した。その結果、google mapに示すとおり、お亀池の斜面下部、歩道より5mほど高い場所を下端に、幅約80m×高さ15mほどの範囲にコシアカツバメがねぐら入りしていた。密度はあまり高くなく、一本のススキに多数が止まるような状況ではなく、密度は比較的低めに見えた。なお、ツバメと同様、ライトによる忌避反応はほとんどなかった。
 ねぐら場所は、ススキ原の中で斜度が急な場所に見えた。目測で40~50度はあったと思われる。斜面の下部を使っていた。微細な環境としては、ススキのあまり成長の良くない場所に見えた(穂が比較的少ない場所)。ススキの部位としては、高い位置の穂は使っておらず、植物体のもっと低い場所(傾いた茎が多い?)を使っているようだった。
 なお、撮影した写真を見ると、コシアカツバメの群れの中にツバメが少なくとも1羽は混じっていた。しかし現場では飛翔中の個体をみる限り全く識別できなかった。


より大きな地図で コシアカツバメ集団ねぐら を表示

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上空を飛翔するコシアカツバメの群れ

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かなりの個体数。実際はこの写真に写っていない範囲をさらに多くのコシアカツバメが飛んでいた。

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ススキ原にねぐら入りしたコシアカツバメ。ススキの穂の部分は使っていない。あまり密度は高くない。

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写真にはツバメもねぐら入りしているのが写っていた。

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お亀池近くの急な斜面下部にねぐら入りした。

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お亀池はヨシ原である。通常であればヨシ原にねぐら入りしそうだが、おそらく貧栄養のためにヨシの成長がすこぶる悪い。高さはせいぜい1m程度しかなく葉も小さい。ねぐら環境としては適さないと思われる。

★ねぐら発ち時の観察
【日時】2012年10月4日(木)5:20~6:10
【天候】曇り
【日出】5:54
【ねぐら発ち時刻】5:32(日出の22分前)
【ねぐら発ち時の明るさ】4ルクス
【観察内容】

5:32 第1群がねぐらから飛翔 1500羽程度 4ルクス
5:35 第2群がねぐらから飛翔 1500羽程度
5:40 第3群がねぐらから飛翔 2000羽程度 この群れが最大 20ルクス
5:43 第4群がねぐらから飛翔 1000羽程度
5:46 第5群がねぐらから飛翔  400羽程度
5:51 第6群がねぐらから飛翔  100羽程度 120ルクス

ねぐら発ち前にはススキ原から小さな声が聞こえる。
ススキ原から湧き出すように群れが飛び出し、どの群れも北西方向に飛び去った。
何群にも分かれて飛び出すのは、ツバメの集団ねぐらと同じ。
しかし、ねぐら発ち後にすぐに散開してばらばらに飛び去ってしまうツバメと比較して、今回のコシアカツバメは群れが散開するのが遅く、かなり遠くまで散開せずに飛翔してるように見えた。

実は夕方のねぐら入り時はここまでねぐら入り個体数が多いとは思わなかった。2000羽程度と見積もっていた。しかし、朝は何群にも亘って飛び出すのを見ると実際には多かったのだと感じた。
ツバメもコシアカツバメもそうだが、何群にも分かれて飛び出し、しかも一度飛び立った群れは戻らずに速やかに去るので朝の方が個体数は数えやすい。

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ススキ原から湧き出すように飛び出すコシアカツバメの群れ

★コシアカツバメの集団ねぐらについての疑問
これだけの個体数のコシアカツバメが周辺で繁殖しているとは考えにくいので、これは渡り途中に形成される集団ねぐらだと考えられる。外側尾羽が長い個体が多いように感じたので相当数の成鳥が入っていると思われる。この時期のツバメと比較するとほとんど成鳥がいないので対照的である。このように高原でのススキ原をねぐらに使うのはコシアカツバメにとっては普通なのだろうか。
とすると、この曽爾高原の集団ねぐらは、季節的にはいつ頃から形成されいつピークを迎え、いつ消失するのだろうか。個体数の季節変化を追えば、いろいろな事がわかるだろう。さすがに何度も通える場所ではないので、地元の人々の調査を期待したい。

また、ねぐら環境としては、急斜面というのは対捕食者として安全な場所を選んでいると考えられる。
しかし、長い急斜面で高い位置でなく、比較的低い場所を選んでいるのは何故だろうか。(低いと言っても、斜面底部より5mほど高いので最低限のマージンは確保していると思われるが。)山岳地の上なので、斜面上部だと風衝が強いからだろうか。

また、少なくとも11年前の記録と同じような状況が確認されたということは、ススキ原の環境として安定している限りにおいては、コシアカツバメに普通に選好される環境なのだろう。野焼きによる環境維持が奏功しているとも考えられる。

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